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「最近、うまい辛口の酒がないなぁ」とお嘆きの貴兄も多いと思いますが、
わたしとしましては、
「最近、いい角型時計がないなぁ」 と嘆きたいところです。
機械式の舶来角型時計は、1930〜40年代、クォーツの国産角型時計は昭和50〜60年代にとても多く販売されていました。
ぐっとくるデザインのものもたくさんありました。
しかし、最近、めっきり少なくなってしまいましたね。
まったく、残念なことです。
ところで、角型時計が似合う人を思い浮かべて見ますと、まず、「スマートな人」というのが挙げられるように思います。
男性ですと、独断と偏見ですが、 エリートサラリーマン、切れ者、長身、知的、スーツ、神経質、すらりとした指、鋭い眼光・・・。
こういった要素がじつにぴったりと当てはまると思うのです。
女性ですと、 成熟、色気、スタイルのよさ、知的、物静か、スーツ、切れ長の眼、仕事ができる、繊細・・・。
こういった要素がじつにぴったりと当てはまると思うのです。
で、この場合、角型時計は手巻きの数十万、数百万もする高級時計ではなく、無銘の何でもない時計であってもらいたいと思うのです。
なぜなら、そのスマートな人物は、ここで想像するところ、「時計趣味」に耽ってあれこれ時計を買い集めるという人物ではなく、ひたすら仕事をし、ストイックに生きている人物を想定しているからなのです。
以下、このように、「ある特定の架空の人物」すなわち、「角型時計がもっとも似合う人物」を想定して話しをすすめます。
まず、選ぶ角型時計は革バンド付きであってもらいたいのです。
ブレスですと、色のコントラストがつかないので、角型特有の直線感が出にくいと思うのです。
さらに、革バンドは汗を嫌いますが、今ここで想定している人物は、「あまり汗をかかない体質」の人なのです。
たぶん、この人物は「夏でもニットの上着を手放さないほど寒がりな体質」であると思うのです。
次に、日常生活でさりげなく、いつも同一の角型時計をつけている。
というのが挙げられます。
彼(彼女)は、適度に着る物には注意を払い、いつも小奇麗な格好をしているのですが、時計だけはなぜかこの角型なのです。
それは、この時計が何となく気に入って、他に時計をもっていても、外出の際にはついこれをつけてしまうからなのです。
また、この角型時計は、エッジが丸まっていず、あくまで角型なデザインのはずです。
最近、よく角が丸まっている「擬似角型」あるいは、「似非角型」のデザインがが横行していますが、やはり、角型はどこまでもぴしっと角型であるデザインを支持したいと思うのです。
文字盤はバーインデックス(棒字)であってほしい。
というのもあります。
個人的には、アラビア数字は角型よりも丸型に似合うように思います。
ローマ数字ですと、やや角型よりになりますが、ローマ数字にはどこか「当りの柔らかさ」を感じさせるところがあります。
やはりここは、鋭いバーインデックスをもって最良としたいところです。
ぜひクォーツであってほしい。
というのもあります。
これは、中途半端に機械時計で、オーバーホールやら振動数やら防水性やら、そういうわずらわしいことから開放されたいからです。
そもそも、この角型時計は、「ただ時計として使う」ということを前提に使われているものなので、味わいとか、思い入れは必要ないのです。
最後に、シルバー色ケースと黒革バンドをもって、最良としたい。
というのを挙げます。
革の色をあれこれ悩んだりはしません。
ここは、潔く「黒」と一言だけいいたいところです。
また、ケースの色も金色という「遊び心ある」色ではなく、地味なシルバー色を選びたいです。
かくして、もっとも虚飾なき、もっとも簡素な、もっとも質実な時計が選択されるのです。
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