カフェテリア・カビノチェ
特選ディスカッション


ハイビート

●Lansing氏の意見

ご存知の様に、8(ビート/Sec)つまり28800(ビート/時間)以上の
ムーブメントをハイビートと言う様ですが、1960年代?に信頼性が
問題となったそうです。
現在、高級ブランドは、6(ビート/Sec)位で抑え、また同じ高級ブランド
でも、クロノメーターは、5(ビート/Sec)にあえて下げて、ブレゲひげを
導入したりしています。
一方、中級から普及ブランドは、8さらには10までビート数を上げて
精度を出しています。中には有名なクロノメーターも有りますが...。

コストを掛けずに精度を出す方法が、ハイビート化で長期に渡る
耐久性は、現在問題無いのでしょうか?

何か、インタークーラー、ターボを積んだ国産車と欧州車のV12、8
気筒エンジンとの比較を連想します。

●上森氏の意見

Lansingさん、

>現在、高級ブランドは、6(ビート/Sec)位で・・・・

補足させていただくと、
パテックの手巻キャリバーの代表作、cal.215が8振動です。
ロレックスなどもほとんど(全部?)8振動ですよね。
パテックとロレックスのムーブメントは高級機械時計のひとつのモデルと
して捉えることができると思うのですが、こういうところをみると、
パーツ品質の向上などによってハイビートでも十分な強度を得られている
とも考えられますね。

また、現行品で5振動のクロノメーター級ムーブメントというと、わたしは
一部のクロノグラフ(パテックの永久カレンダーなど)くらいしか思い浮かびません。
他にご存知の方いらっしゃいましたら、教えて下さい。

>コストを掛けずに精度を出す方法が、ハイビート化で長期に渡る
>耐久性は、現在問題無いのでしょうか?
>何か、インタークーラー、ターボを積んだ国産車と欧州車のV12、8
>気筒エンジンとの比較を連想します。

面白い連想ですね。
その雰囲気、わかるような気がします。(笑)

車の持ち主の手入れや使い方がよければ、インタークーラー、ターボを積んだ国産車の方が、
手荒に使われるV12気筒エンジンの車より調子良く乗れる期間が長いかもしれません。

でも、「やっぱりV12気筒エンジンの方が余裕があるし、味わい深いので好き」
という方も、もちろんいらっしゃることでしょう。

そういったわけで、
耐用年数というのは構造よりもむしろ、使用者の使い方、手入れ、純正パーツの供給のよさ
によって大きく変わり、
構造については、使用者の好みによって大きく好き嫌いの別れるところ
だとわたしは思います。

Lansingさんはハイビートのモデルとビートの遅いモデル、
どちらがお好きですか?

●Lansing氏の意見

以下の文章を訂正します、クロノメーター → クロノグラフ

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現在、高級ブランドは、6(ビート/Sec)位で抑え、また同じ高級ブランド
でも、クロノメーターは、5(ビート/Sec)にあえて下げて、ブレゲひげを
導入したりしています。
一方、中級から普及ブランドは、8さらには10までビート数を上げて
精度を出しています。中には有名なクロノメーターも有りますが...。
*********************************************************
失礼しました。 

ハイビート化は、コストを掛けて部品の精度を上げずに、時計の精度
を改善する方法なのでしょうか?

先ほどの欧州車は具体的に、アルピナ、フェラーリ、ポルシェなど
を上げれば、イメージがよりはっきりとしますでしょうか。
 *6気筒も有りますが...。

●周くんの意見

Lansingさん、こんにちわ。
まず、それを考えて見るときに、精度を追及してきた歴史を振り返って見ます。

時計の精度の追及ですが、まず、素材の選定、加工精度の追及、部品形状の追及
がなされました。そうして、その中で精度をもっとアップさせる方法として
高振動化が選択されました。よってジュネーブシールを認定されるようなムーブが
高振動化を目指したら、精度に関してはもっとすごいものになるでしょうね。

高振動化を計り、テンプの振動を上げると、振動や衝撃に影響されにくくなり
精度を追及するにはとても役に立ちます。しかし、慣性モーメントを減少させるために
テンプを縮小する必要があります。これは、Ransingさんの、欧州車でたとえると
多気筒化です。一気筒あたりのシリンダー体積を減少させることによって
慣性モーメントを減らし、高回転までスムーズに回転数が上昇するようにしているのと
同じですね。しかしおっしゃるように、高回転というのは、車の場合でも、時計の場合
でもメカニズムに負荷がかかることは間違いありません。フェラーリの12気筒の場合
昔のコンピューターが車に搭載されてなかったころなど、12気筒のうちの半分程が
動いていなかったということもよく聞きました。確かに、何本かが沈黙していても
走るのには影響はないのですが(笑)。
この高振動化というのは、人間の体においても見られ、たとえば心臓の鼓動ですね、
心臓の鼓動が多いということは、それだけ高回転に相当するわけで、どうしても
基礎代謝量は多くなると考えられます。同じように、拍動の回数が少ない人の方が
長年では、いろんな所への負担は小さいように気がしますね。

話がずれてしまいましたが、時計に戻って、精度をあげるために
高振動化をはかるのは、とても有効な方法です。しかし、ぜんまいを強力なものにし
それに耐えられるだけの各部品の耐久性をアップさせなければなりません。
よって、高振動化を計って精度を追及しているたとえばエリプリメロなどのように
何十年と現在でも問題なく動いているムーブは、その部品の耐久性までしっかりと
確立されているのではないでしょうか。
コストを押さえて高振動化によって、精度を追及するというのは、
なかなかむずかしく部品の耐久性、そしていろんなバランスが必要でしょうから
決して長年それが機能するためには、その開発にかかる経費を考えると
コスト減にはならないと思います。
もし、高振動化によって精度を追及するという表面だけをとり入れるメーカーが
あるならば、たぶんそれは長年の耐久性はでないのではないだろうかと考えてしまいます。

●上森氏の意見

ハイビートについて盛り上がってますね。
わたしもハイビートについて考えて、よく悩みました。
確かに気になりますよね。

どうしてハイビートの方が時間がよく合うんだろう?

たとえば、真空状態で空気抵抗もなく、パーツの摩擦なども起こらず、
外部からの衝撃もないと仮定した場合、
果たして5振動よりも8振動の方が時間が良く合うのだろうか?
などといって、周囲の技術者を困らせていたことを思い出します。(笑)

そのときの結論は、
「空気抵抗や摩擦や外部からの力など、いっさいのマイナス要因が起こらなければ、
5振動でも8振動と同じくらいよく時間が合う」
というものでしたが、実験して確かめたわけではないので正直なところ、少し疑問が
残るところです。
条件によって、もし5振動も8振動も同じくらい時間が合うのであれば、
極論すれば5振動の機械式と3万振動以上のクォーツの等時性も、理論上は同じということ
になるはずですからね。

ただ、精度を上げるには振動数を上げるのがよい、ということは経験上
よく理解できます。
分解して組み直しても、ハイビートなら「どうしようもなく合わない」ということは
まずありません。
そういう意味で、ハイビートは調整しやすいところがあると思います。

でも、チラネジテンプが5振動で振幅している姿にも捨て難いものがありますよね。
私の場合、低振動のものが欲しいと思う事が多いのですが、これはあくまで趣味的なもの
です。

●crossroads氏の意見

時計の性能に関してのレスは先の諸氏が述べられてるので、違った観点から

8振動(毎秒)の振動では*3600(毎時間)*24(毎日)で約69万振動、
1年で2億5千万、10年で25億振動、20年使って50億振動。

平均3000rpmで走るエンジンは*60(毎時間)*8(一日8時間乗って)
*年間200日乗って2億8千万、10年で28億回転。まあ大事に乗っても
20年(56億回転)で寿命ってところ。

時計のばあいも20年(50億振動)が目安になるように思います。
(強引!) 5振動だと50億まで約32年持ちますね。ただし、天輪の重さが
5振動は大きいので、(DOHCに比較してターボの回転数が低いのに、圧縮比は高く
トルクは大きいのと同じように)そこまで(20:32)までの差は開かないので
はないでしょうか。
 
もちろんインタークーラーなどを使用して濃密な空気をたっぷり入れれば、
当然トルク、馬力共に増えてエンジンにとっては大きなストレスとなるで
しょう。チラネジ、ジャイロマックスも重量としては多くなるので、軸に
対しては負荷となるのではないでしょうか。

つまり、20年後の再販価値を考えてゆっくりいくか、あきらめて初めから
気持ちよく回して行くかって選択ですね。

多気筒エンジンも実際には、ピストン間のバランス取りが難しく、そんなに
綺麗に回りません。また巨大になったシリンダヘッドの重さと、バルブ系の
ロスがパワーをかなり食ってしまうと思います。もちろん操縦性にも影響が
出てくるでしょう。

ターボにしても、ちゃんと調整しないエンジンの馬力を出そうといろいろ
付けるので、どんどん部品が増えてしまってエンジンルームがクロノグラフ
状態になっています。

やはり基本はバランス取りしたピストン(天輪)にきっちりしたミッション
(輪列)を組んで、堅牢で品の良いフレーム(ケース)に入れた押し出しの
良い車(時計)ってことで、気筒数(振動数)はあまり気にしなくても良い
のでは・・と思います。なぜかポルシェとIWCが浮かんでくるなあ。

●Lansing氏の意見
 
車の話が続くと、そのうちアルピナ、ポルシェのターボの例などに、
はまって行きそうですね!!
パテックを12本持っている人は、今度は例の永久カレンダーが欲しい
と言っていました。  どこで止めるかが問題ですね。