褐色時計の世界
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祝 褐色時計協会 様

















フュジー
(Fusee)
円錐滑車。螺旋状に溝が刻んである円錐状の部品。
香箱外周と鎖で繋がっており、ぜんまいのほどける力を均一化するギアのような働きをする。均力車とも呼ばれる。
ダストキャップ
(Dust Cap)
読んでの通り埃よけカバー。ケースの鍵穴から埃などがムーブに侵入するのを防ぐ。透かし彫りケースには特に重要。
真鍮製や銀製の物があり、このカバー自体もコレクターズアイテムとなっているせいか、逸失している時計もしばしば見られる。
バージ脱進機
(Verge Escapement)
懐中時計では15世紀末から19世紀初頭まで主流の機構である。
輪列の構造等、メカニズムの詳細は別の機会や書籍に譲る。
世界の腕時計誌などの懐中時計特集で触れられている。

補足)
使用上の観点や注意としては、なにぶん200年以上前の製品であり、よい状態で残っている物はあまり多くない。
しかし、状態のよいものを扱いなれた方がビシッと調整すれば日差1、2分と十分実用精度になる場合もあるようだ。
ただし、姿勢差や温度差による精度の変化も現代の時計に比べるとかなり大きいので基本的には、芸術品としてのコレクションと考えた方がよい。
また、修理調整を受け付けてくれる業者も少ないと思われる。
シリンダ脱進機
(Cylinder Escapement)

懐中時計では18世紀初頭から現れるが、主流となったのは19世紀である。
本機構によりレピーヌ、ブレゲといった偉人達が時計の薄型化を実現していく。
(初期の頃は、フュジー付きの厚型ムーブも珍しいが存在する)
輪列の構造等、メカニズムの詳細は別の機会や書籍に譲る。
世界の腕時計誌などの懐中時計特集で触れられている。

補足)
使用上の観点や注意としては、状態のよいものを調整すれば、日差1、2分といった実用精度になる場合もある。
しかし、ユーザに現代の時計の精度を基準に比較されてしまうせいか、修理業者の方には精度がでない時計と言われてしまうこともあるようである。
天真に独特の形状の切れ込みがあり、天真にダメージがある場合、別作は非常に困難。
修理調整は、古くからの時計屋さんやアンティークの懐中を扱うお店なら請け負っていただけると思う。

ファイアギルド
(Fire Gilt)
環境基準も公害も労働基準法という言葉もなかった時代ならではの製法。
金と水銀の合金を付着させたのち、熱して水銀を蒸発させて金のみ残す。
時計師辞典をみると短命な方が多く目につき著名な親方程、長生きな気がするのはひょっとしたら、この製法の影響もあるのかもしれない。
バランスコック
(Balance Cock)

羽付のバランスコック
(Winged Balance Cock)
いわゆる、テンプ受けで大きく分けてイングリッシュスタイル(てるてる坊主のような型)とコンチネンタルスタイル(丸型)の2種がある。
緻密な透かし彫りがあり、コレクターズアイテムともなっている。
さすがに、これが逸失した時計は故障扱い品以外にはみられない。
羽とは、イングリッシュスタイルの首のあたりに飾りでつけられたなまずヒゲのような部分。
修理分解や経年変化で折れてしまっていることも多い。
ブルズアイグラス
(風防)
(Bullseye Glass)
中央部分が平らに削られている古時計独特の風防。
ケース背面にリポセやエナメル等の装飾がある場合、それを痛めないように風防側を下に安定して置くことができる。
もし、風防を割ってしまった場合入手も別作も非常に困難である。
シャンプレーブダイヤル
(Champleve Dial)
金属板を腐食させて作成する物で独特の風合いがある。
金属板細工をエッチング処理した物を思い浮かべると分かりやすい。
リポセ彫刻
(打ち出し彫刻)
(Repousse)
もちろんプレス加工でなく手作業である、このような精密な細工をしながら、時計のケースに仕上げるにはいか程の苦労があり、またいか程の歩留まりだったのか・・・いつも考えこんでしまう。
エナメル細密画が絵画の観点で素晴らしい芸術品なら、負けず劣らずリポセと透かし彫りは彫刻の観点での素晴らしい芸術品である。
ガットフュジー
(鎖の代りに猫の腸を使用)
(Gut Fusee)
18世紀になると鎖に駆逐されてしまうが、17世紀中頃までは猫の腸等を使用していた。
ペンダント
(Pendant)
いわゆるリューズ位置の部分。
近代のリピータでは、ケース側面のプッシュボタンやサイドレバーを押し下げたり、引き上げたりすることでリピータ駆動用のぜんまいを巻き上げるが、古時計ではこのペンダントを押し込む形式の物が多い。
特殊なものではリピータ専用の香箱がありあらかじめ鍵でまいておき、 ペンダントに稼働用のスイッチを用意した物もある。
ハーフ・クォータリピータ
(Half Quarter Repeater)
一般には、クオータリピータ、ミニッツリピータが有名だが他にも数は少ないが下記の物がある。

5ミニッツ    -- 時間+5分単位
2時50分なら、2回+10回
アワーリピータ-- 時間のみ
2時50分なら、2回
ハーフクオータ-- 時間+クオータ+7.5分
2時50分なら、2回+3回
2時55分なら、2回+3回+1回

特殊な物ではクロックウォッチがある。
掛け時計のように毎正時に時間数と30分時に1回単音の鳴るもの。
(プチソネリ)
15分単位にクオータ音がなりさらに毎正時には時間も鳴るもの。
15分単位にもクオータ+時間も鳴るもの。
(グランソネリ)
さらにはグランソネリでウエストミンスタ音を奏でる物まである。

注)プチソネリとグランソネリの定義は諸説あるようだ。
ピラー
(Pillar)
地板を支える柱
時代毎に流行した(?)様式があり、この形状でもおおよその年代が判断できる。
一般的には古い時代ほど凝った透かし彫りや、複雑な形状のものが見受けられる。
産業革命後の大量生産の時代になると簡略化され19世紀になってしまうと装飾のない丸い柱となってくる。
代表的なものとしては以下のものがある
スクエアバルスターピラー
(Square Baluster Pillar)
断面がほぼ正方形で側面からみるといくつかの段がついており、バルコニーの支柱に似ていることからこの名がある。
17世紀後半から18世紀中期の長い期間用いられた様式である。
エジプシャンピラー
(Egyptian Pillar)
古代のエジプト建築を連想させる形状からこの名がある。
断面が四角形で途中に大きな膨らみがあり縦にスリットと小さな穴があいている。
上部に透かし彫り彫刻の飾りが付いたものもある。
17世紀末から18世紀初頭の短い期間使われたが、透かし彫りのついたものは18世紀末から19世紀初頭のトルコ向け時計等に複製(彫刻ではなく鋳物)が使用された例もある。
チューリップピラー
(Tulip Pillar)
側面がチューリップの茎に似ていることからこの名がある。
主に17世紀中期から末の時計に多くみられる。
ターンドピラー
(Turned pillar)
日本のこけしに似た形状で手回しの旋盤(ターン)で作られたことからこの名がある。
15世紀末から17世紀中期頃までの懐中(携帯?)時計に多くみられる。
シリンドリカルピラー
(Cylindrical Pillar)
ターンドピラーと似ているがそれほど大きな凹凸がなく円柱に近い形状からこの名がある。
産業革命以降の18世紀後半からフルプレートムーブメントの終焉まで使用される。
カボションカット
(CabochonCut)
丸く半球状にカット&研磨する宝石の加工様式。
シングル、ダブル、ファセット、凹 の4種ある。
時計の場合は、テンプの蓋石に使用されるのでシングルか凹?
ローズカット
(Rose Cut)
上面が尖った多面体で底部が平面なドーム状の加工様式。
アンティークのダイヤモンドに多くみられるカットである。
ベルメタル
(Bellmetal)
近代のリピータでは極一部を除いて、ワイヤー(ゴング)をハンマーで叩いて音を発生させるが、18世紀中期過ぎ頃までの古時計ではベルをハンマーで叩く形式の割合も高い。
これは、時計自体が厚型であったからこそできたともいえる。
金属の鐘を思い浮かべていただくと分かりやすいが、ワイヤー式に比べると澄んで余韻のある大きな音がするのが特徴である。
音色はベルに使われる金属の材質により大きく左右されるため、時計師はよい音色を出すための合金の研究もしたそうである。
その合金をベルメタルと称する。
コインエッジ
(Coin Edge)
コイン側面のギザギザを模した装飾。
ラチェット鍵
(Ratchet Key)
逆回転の防止機構。継ぎ目が斜めの波状になっており、波を上る方向には空回りする。
この機構のためぜんまいを巻く場合に空回りできるので鍵から手を離して持ち代える必要がない。
残念ながらこのラチェット部分が痛んでしまっている物も多い。比較的高価な鍵である。
クランク鍵
(Crank Key)
クランクのように回せる取っ手がついており、クルクルと回して巻くことができる。
16〜18世紀中期までの時計に多く見られる。
非常に古い形式なので数が少なく高価な鍵である。
ブレゲ鍵
(Breguet Key)
ブレゲが考案したラチェット鍵の1種。
頭の部分が縦の円筒になっているのが特徴。
類似でよく見られるものとして円筒の替わりに花型の輪がついているものがある。
ベンチ鍵
(Bench Key/Birch Key)
万能鍵。鍵がチャックになっておりフリーサイズで使用できる便利な鍵である。
ユニバーサル鍵
(Universal Key)
中央のリングから放射状に各種サイズの鍵が生えている。
1本あると便利である。
トランスルーセントエナメル/シャンルベ
(Translucent Enamel)
透明なエナメル。
赤、青、緑などが多く見られる。
通常はギョウシェ彫りされたケースや文字板の上を覆う形で使用され光の当たる角度により美しい模様が浮き上がって見える。
現代でもユリスナルダンなど一部のメーカが文字板の装飾に採用している。
デュプレックス脱進機
(Duplex Escapement)
19世紀中ごろから20世紀初頭くらいまでに多くみられる。
本来は精度の向上をめざして考案されたものであるが、調整が難しい脱進機のためもあり状態のよいものは少ないと思われる。
本来の高級な作りのものから、簡素な作りのものまである。
主にスイスで作られたと思われるが、ウォータベリー社等のアメリカのメーカも作成している。
それらはアメリカンデュプレックスと呼ばれている。
ラック
&ピニオン脱進機

(Rack Lever Escapement)
ラック&レバーとも呼ばれるこの脱進機は、バージからイングリッシュレバー脱進機への移行期の短期間だけ作成されたものである。
残念ながら、掲載写真では分かりにくいが、天真の振り座にあたる部分がピニオンに、レバーの振り石あたる部分がラックになっており、ジャキ、ジャキという感じで動く。
インディペンデントセコンド
(Independent Seconds)

独立秒針ともいい通常の時計機構に加え、秒針用の香箱と輪列が加わった二重構造をしており、秒針がステップ運針するのが特徴である歯車の比によりステップ間隔はいろいろなバリエーションがあるが、多くは1秒1ステップで一見クオーツ時計のように見える。
クロノグラフの原形といわれる。

補足:

簡単にステップ運針する仕組みの例を紹介する。数種の方式があるらしいが、なんとか言葉でわかりやすく説明すると、通常の輪列の4番車のカナによって独立秒針用の4番車からでたガンギ車替わりの部品(魚のような形をしている)が回転を止められたりリリースされたりすることによって、1振動の脱進機相当の制御を行っている。ステップ運針するのはそのためである。

バギュール脱進機
(Virgule Escapement)
シリンダ脱進機と見間違えてしまうことも多いくらい一見似ている。
簡単に描写すると、天真から1本長い鬚のようなトゲが生えておりそのトゲをガンギの歯の先端に垂直に立てられたピンがどかす様に押してテンプを回転(振動)させる。
非常に現存数は少ないと思われる。
また、トゲの加工が困難な為、天真が折れた場合の別作は非常に困難と思われる。
自動巻懐中時計
(Automatic Winding)
現行品でもブレゲが受注生産を行っているが、19世紀にはもう少し普及型の物も作られていたようである。
振り子の上下運動でぜんまいが巻き上げられる。
この振り子の衝撃はテンプの動きに影響を与えないのだろうか?
ボウ
(Bow)
弓環ともいう。リューズの周りの輪。鎖や紐をつける。
ウォームギヤバレルセット
(Worm and Wheel Barrel setup)
バレル(香箱)の巻芯をセットする際、ウォームギヤという芋虫のようなスクリュー状のギヤとピニオンギヤの組合せで固定する。
ウォームギヤの回転によりゼンマイのテンションを自由に調整出来るので調整が楽である。
本来はヒゲバネ(バランス・スプリング)が発明される前にテンプのアレイ移動やホッグドブリストル(動物の剛毛によりテンプの振り角を規制)などと併用して歩度の調整に用いられた。
パラシュート・サスペンション
(Parachute Suspension)
衝撃から天芯を保護するための初期の機構。
長い腕の先に非常に細いくびれを作り、さらにその先に軸受けをセットする。
ブレゲの発明による。
バイメタルにより
自動的に温度補正を
する緩急針

(Bimetallic Compensation Curb on the Regulator)
バイメタルが温度差で収縮するのを利用し温度差に合わせて緩急針を自動調節する。
ヒゲぜんまいの材質改善が出来なかった頃ならではの発想だが歩度調整が難しそうに思う。
ディスク型レギュレタ
(Silver Regulator Disc)
17世紀末〜18世紀末のイングリッシュウォッチに多く見られる緩急調整用のダイヤル。
銀色のダイヤルに目盛をつけ、その裏側に歯車をつけて、テンプの周囲に設置された弓型のラックと噛み合う。
ラックはレギュレタカバーの裏側にそって切られたレールによりヒゲばねの外周にそって回転するようにスライドする。
フランスやスイスの時計では主に歯車の角穴に指針を付けたものが多く使用される。

19世紀初頭には簡易なものとしてバランスコックやテンプ周辺の地板に直接レバーをとりつけ、これを緩急針とするものが現れ、19世紀中期ころにはほぼこれに置き換えられた。
ラペル・ウオッチ
(Lapel Watch)
ラペルとはスーツ等の衿の下衿を指す。
このラペルにつけるようにデザインされた20-30mmほどの小さなペンダント・ウオッチとウオッチ・ピンのセットのこと。
スウィベル
(Swivel)
いわゆるナス環。
しずく型の時計を下げる金具で、一部が内側に折れるようになっており、ここに時計のボウをひっかける。



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