<腕時計の裏ブタについて>

@

ねじ込み式裏ブタ

腕時計の裏ブタには、さまざまな形式のものがあります。
概して、ダイバーウォッチなど防水性が重要視される時計には「ねじ込み式裏ブタ」が採用されています。
この形式はフタの外周にネジ溝が刻み込まれていて、ケース側のネジ溝にぴったりと合うように設計されています。
フタは、工具を使用して回転させて開閉します。
回転させるときに、工具に引っかけるための溝(引っかけ部分)がフタについているのですが、この形状はさまざまです。

ロレックスなどは、大変細かい線のような溝が多数入っていますし、オメガのように丸い穴が開いているものもあります。
また、パテックのように多角形の形状があらかじめフタに施されているものもあります。
これらはブランド専用の開閉工具が必要です。

一般的には、6個くらいの四角い溝のついているものが多く、この形状であれば汎用のオープナーで開けることができます。

ねじ込み式裏ブタは、比較的簡単に開くタイプのものと、非常に固くしまっているタイプのものがあります。

ダイバーウォッチなど高い防水性の要求される時計は概して固くしまっています。

ケースにステンレスを使っている時計は、長年使用しているうちにフタが錆付き、ケースに癒着していることがあります。 こうなってしまうと、開けるのはとても大変です。
一方、18K素材などでできた時計は、錆付くことがないのでスムーズに開閉ができます。

ねじ込み式裏ブタを取扱うときの注意点は、工具の爪とフタの溝をしっかりと一致させるということ、そして、一旦開けたフタを閉めるときには、ネジ溝が正常にかみ合っているかどうかを何度も確認することです。
もし、ネジ溝がずれてかみ合ってしまっていたとしたら、力いっぱいにフタをねじ絞めるとネジ溝が大変傷みます。
一度このような失敗を行ってしまうと、ネジ溝に変な癖がついてしまい、その後に開閉する度に不適当な閉まりかたをしがちになります。
また、一度ネジ溝にダメージを与えてしまうと防水性が著しく低下します。

ケース枠にパッキンを使用しているタイプの時計もねじ込み式裏ブタを閉めるときには注意します。
パッキンがフタとケースの間に不適当に挟み込まれてしまうと、パッキンが著しく傷むのはもちろんのこと、防水性も低下します。
固く閉まっているねじ込み式裏ブタを開けるときには、写真のような保持器を使用します。
保持器には写真のもの以外にもさまざまな種類があります。
高級時計はムーブメントだけではなくケースの設計もしっかりしているので、不良な裏ブタが使われていることはまずありませんが、安価な時計、あるいは適正なメンテナンスを受けなかった時計、または何度も何度も乱暴な開閉を繰り返している時計は、裏ブタが不良になっていることも多く、そうなってしまうと防水性の低下によりムーブメントへ及ぼすダメージは大きなものになります。
裏ブタの開閉は慎重に行うことをおすすめします。
A
ネジ止め裏ブタ

裏ブタの外周をビスで止めてあるタイプの裏ブタです。
ネジを4本使っている4点止め、5本使っている5点止め、6本使っている6点止めなどが一般的です。

このタイプの裏ブタはドライバーさえあれば開けることができるので開閉は簡単です。
ただ、先述の錆付きの問題はこのネジ止め裏ブタにもあてはまり、長年の使用によりネジが錆付いて抜けなくなっていることがままあります。
このとき、ドライバーを力まかせに回転させてネジを抜こうとすると、ネジ山が崩壊してしまうことやネジ山が取れてしまう(折れてしまう)ことがありますので注意が必要です。

ケースの構造にはいろいろなものがあり、このネジがとても長くなっていて、時計前面のベゼルをも固定しているタイプがあります。
こういう時計は、一度ネジを抜くと前面ベゼルも取れます。
組むときにはベゼルの位置に合わせてうまくネジを差し込まなくてはならず思わぬ手間がかかることもあります。
ネジ止め裏ブタに限ったことではないですが、ネジは純正パーツを使うのが理想です。
錆びネジを交換する必要にかられて、でも純正ネジが手に入らない場合、よく無理矢理似たようなネジを締め込むことがありますが、こういったことを繰り返すとネジは抜けやすくなりますし、ケース側のネジ溝も傷み、ケース本来の性能を引き出すことが出来なくなってしまいます。

素材が金などの貴金属であることの優秀性はこういうところにも現れます。
金(またはプラチナ)は錆びないのでネジが錆付くこともなく、いつまでもスムーズな開閉ができます。

B
はめ込み式裏ブタ

はめ込み式(スナッチ式)裏ブタは、最も多く使われているタイプでしょう。
ごく、一部に専用工具でないと開かない(パテックなど)タイプがありますが、通常は「こじ開け」と呼ばれるナイフの先のような尖った刃をもつ工具で開けることができます。

ケースと裏ブタの隙間にこじ開けの先を突っ込んで、上または下にこじ開けを倒すようにして裏ブタを開けます。


最近はケースの加工技術やパッキンの質も向上していて、ねじ込み式裏ブタでないこのはめ込み式裏ブタでも高い防水性をもっています。
このタイプのフタを取扱うときの注意は、こじ開けを力まかせに突っ込まないということ、そして閉めるときはしっかりと、指で押さえつけたり圧入器などを使ったりして完全に閉めることです。

厚みのある裏ブタなどは、開けるときにも力がいり、閉めるときにはそれ以上の力がいることもしばしばです。
力を入れ過ぎて時計を手から滑り落としたりしないよう注意して下さい。


パッキンについて

現代の時計には、ほとんど裏ブタにパッキンが使用されています。
このパッキンは裏ブタを開けたり閉めたりする度(または数回の開閉に一度)に新しいものと交換するのが理想です。 また、開閉のたびにシリコングリースなどをパッキンに塗っておけば防水性の向上になります。


・・・つづく



Copyright(C) Digital Art Creators ,INC. Allrights Reserved