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等時性と姿勢差
   
   

















等時性と姿勢差

等時性

等時性とは、振動する振子の振幅が大きくても小さくても、周期すなわち1往復に要する時間は同一であるということです。
これは、ガリレオ・ガリレイが発見した法則です。

図を見ながら確認してみましょう。
まず「振子」を想像してみてください。

振子は重りをつないでいるアームの長さが短くなれば振動周期は短くなります。
これは、”時計の緩急”のところでご説明しましたね。

そして、振子には他の特性もあります。
それは、
振子のアームの長さが同じであれば、振りが強くなっても弱くなっても振動周期は同じという特徴です。
つまり、振子は幅広く大きく振れても、幅狭く弱く振れても、一往復するのにかかる時間は同じということです。

振子のついたボンボン時計でも、腕時計でもこの原理を応用して等時性を作り出しているわけですね。
腕時計の場合は、振子に相当するものがテンプとヒゲゼンマイということになります。
振子の振動の幅はテンプの振り角に相当するのです。

さて、理論上ではこのようにテンプの振り角が変わっても等時性は維持されるはずです。
時計はこの原理を応用して、時間が合うように設計されているのです。

しかし、実際にはさまざまな要因が重なって、等時性を狂わせることになるのです。


●姿勢差
理想的な時計は、どの向きに置かれても進んだり遅れたりしないものです。

文字盤を上にして置いておくと1日5秒進む時計が文字盤下に置くと1日15秒遅れる。
リューズ下にすると1日20秒進み、リューズ上にすると1日30秒遅れる。
これはいただけません。
普通は、いちいち色んな姿勢で誤差を測ったりしないのでわからないのですが、こんな時計でもちゃんと動いていれば誤差が平均化されて1日3秒くらいしか狂っていないように見えることがあります。
このように時計の姿勢によって進み遅れが変わることを「姿勢差」(しせいさ)といいます。

「このアンティーク、40年も前の時計なんだけど、ぜんぜん狂わないんだよね。」
なんて言っている人の時計をビブログラフという誤差測定器で測ってみると姿勢差でガタガタで、何故か分からないけど使っているうちに誤差が分散されて時間が合っているということはよくあります。

さて、どうして姿勢差が生じてしまうかについて考えてみましょう。

●姿勢差の種類
姿勢差には、次のような種類があります。

水平姿勢(文字盤上と文字盤下)間で誤差が生じる
垂直姿勢(9時上、6時上、3時上など)で誤差が生じる
水平姿勢の日差と垂直姿勢の日差との間に差が生じている

●姿勢差の原因

<水平姿勢での姿勢差>

文字盤が上を向いた時と下を向いた時で誤差が生じる原因には以下のようなものがあります。

・天真のほぞの先の面(受石と接触している面)が上と下で異なっているために、上向きと下向きでは
摩擦の程度が異なるようになり、誤差が生じる
・テンプを支えている上下穴石の位置が一直線上になく、ずれている。
そのために上を向いた時と下を向いた時に重力の影響の受け方が変わり、誤差が生じる。
・テンプを支えている上下穴石の穴の擦り減りかたに差がある。
そのために、穴石と天真ほぞとの摩擦の度合いが上を向いた時と下を向いた時で変化してしまう。
このことにより、誤差が生じる。
・ヒゲゼンマイが上を向いた時や下を向いた時に、上下にわずかながら移動し、緩急針との接触位置がずれたり、他のパーツに触ってしまい、誤差が生じる。
・アンクルの振幅幅を決めているドテピンが地板に対して垂直に立っていない。
このために、アンクルが上向き下向きでわずかながら上下したときに、振幅幅が変わってしまい、誤差が生じる。
・ヒゲが完全に水平に整形されておらず、上側か下側に向かってねじれている。
そのために上下間で誤差が生じる。
・ごみなどが、機械内部にあり、上姿勢下姿勢でパーツの駆動や動作に影響を与え、誤差を生じる。

<垂直姿勢での姿勢差>

時計を縦に動かした時に誤差が生じる原因としては、主にテンプの片重りが挙げられます。


●テンプの片重りとは?

テンプの片重りとは、テンプのどこかが他にくらべて重くなることによって重力の影響を受け、誤差を生じさせることです。

●テンプの片重りの種類

・テンプ自体(ヒゲは関係ない)に片重りがある場合 −−−− 主に天輪の片重りテンプが縦姿勢で重力の影響を受け、誤差を生じる。
・ヒゲゼンマイが適正に整形されていないために、ヒゲの重心位置が中心に位置せず、縦姿勢で重力の影響を受け、誤差が生じる。
・ヒゲの巻きだし地点の位置が、地上から見ると変化することにより、重力誤差(グロスマン効果)を生じ、これによって誤差が生じる。

<水平・垂直間の姿勢差の差>

水平姿勢の歩度と、垂直姿勢の歩度との間に差が生じる原因としては、

・水平姿勢から垂直姿勢に移行した時、テンプの振り角が変わるために誤差が生じる、

と言うようなことが考えられます。
原因は、天真と穴石の接触面の面積が水平姿勢と縦姿勢では変化し、摩擦の度合いが変わるからです。

天輪の片重り

姿勢差の代表的な原因である天輪の片重りについて見てみましょう。

時計の心臓部であるテンプは、理想的には真円で均等な重さで作られていなければなりません。
テンプのどの場所も他の場所より重かったり軽かったりしてはいけないのです。
しかし、現実はそうはいきません。
どんなに慎重に作っても、どこかしらムラができてしまい他よりも重いところができるものなのです。

さて、テンプの一部に他より重いところが出来てしまったらどうなるのでしょうか?

テンプの一部が他より重いと、時計がタテ姿勢のときにその重いところが重力の影響を受けます。
つまり、重いところが重力によって引っ張られて等時性に影響を及ぼしはじめます。

一般的には、片重りが真下にある場合、
テンプの振り角が220度よりも小さい時には、進み
テンプの振り角が220度の時には、 ±0
テンプの振り角が220度を越えると、遅れ
になります。

もし、片重りが真上にある場合には全く逆で、
テンプの振り角が220度よりも小さい時には、遅れ
テンプの振り角が220度の時には、±0
テンプの振り角が220度を越えると、進み

になります。


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