これから時計を買う人にとって、精度の高さはとても気になるテーマです。
「この時計は正確ですその証拠に・・・」という保証のようなものが欲しくなるものです。
そのために、多くのメーカーは精度に関する高い社内基準を作ってそれを告知(昔のグランドセイコーやジャガー・ルクルトなど)したり、期間限定で歩度を検査する局にムーブメントを送って、第3者に誤差を測ってもらい、許容範囲内の誤差であることを認定してもらったりします。
時計を買う人はその証明を見て安心して買うのですが、時計愛好家としてはさらに一歩踏み込んで考えてみたくなります。
時計に付けられている認定は、あくまでも「新品の状態で検査した結果」であって、その精度を何十年も保証しているものではないのです。
確かに、精度の高さをうたっているメーカーは、それだけの手間と配慮をかけているので良いムーブメントを作ります。
しかし、そのムーブが今後もよい精度を保ち続けるかどうかは使用者の使い方に大きくかかってきます。
たとえば、
・湿気の多いところに放置してムーブにダメージを与えたり
・磁気を帯びさせたり
・硬い床などに落とすなどの衝撃を加えたり
・長期間分解掃除をしなかったり
・適切な技術処置を受けなかったり
することを何度も繰り返していると、どんなにいいムーブメントでも疲労し、やがては十分な精度を出せなくなります。
逆に言えば、「並品の時計でもちゃんと手入れして大事に使えばいつまでもよく合う」のです。
時計を見る時には、「この時計はいつまでも修理できるのか?」ということを問いましょう。
修理用パーツが手に入らなくなると手入れをすることも出来なくなるわけですからね。
この疑問をもつことの方が、今この瞬間の精度を問うよりも遥かに重要なことだと思います。
ただ、この文章では時計の精度だけを問題にしましたが、精度が悪くてもユニークで楽しい時計はたくさんあります。
今のムーブはどれも洗練されていますが、昔のムーブは笑ってしまうような構造のものもありますし、そういうのを見たり買ったりするのも時計の楽しみだと思います。
「よくこんなこと考えて作ったね」とか言って感心しながらね。
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