さて今回は、磁気についての話をしましょう。
時計にとって、磁気というものは大敵ですよね。でもその目に見えない磁気を計る尺度があるのをご存知ですか?
磁気を表示する単位としては、ガウスが有名ですが、これは磁束密度といい、一定の範囲内にどれだけの磁力線がつまっているか、ということを示す単位です。それに対して、磁気の強さそのものを示す単位として、A/m(アンペア・メーター)という単位が存在します。こんなことをいっても抽象的であまりピンとこないかもしれません。
では、具体的に説明しましょう。1A/mとは、100W(ワット)の直流電流を流し、それによって生じる磁気の強さです。ちなみに、ガウスに換算すると1A/mは80ガウスです。日本工業規格による耐磁時計とは、次の2種に分かれます。
1)第一種耐磁時計
時計を4,800A/mの磁界にさらして、一日45秒以上の誤差を生じないこと。
2)第二種耐磁時計
時計を16,000A/mの磁界にさらして、一日45秒以上の誤差を生じないこと。
現在ほとんどの時計は耐磁設計になっていますが、この数ある時計の中で、磁気に強い、つまり「超耐磁」といえるものは、Rolexのミルガウスが、生産終了になって以来、IWCのインヂュニアとパイロット・ウォッチだけ、といっても過言ではありません。
両者とも、最低でも40,000A/m、最高で80,000A/mの能力を備えています。
これは実際あった話ですが、「発電所に勤めているので、インヂュニアをつけていないと時間が狂って仕事にならないんです。」という人もいました。
今でこそ「テレビの上に時計を置くな。」などとあまり言わなくなりましたが、時計にとって磁気は大敵です。時間が合わない原因の大半を示すのは、磁気帯びといっても良いくらいです。磁気というものは、距離の2乗に反比例して減少していきます。
しかしながら、現在の環境は磁気だらけです。気をつけるというのは大変無理がありますが、時計を腕につける時には、「磁気」というものについて、少しでも頭の中に入れてやってほしいと思います。
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